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大阪地方裁判所 平成3年(ワ)2415号 判決 1993年3月22日

第一事件原告、第二、第三事件被告

甲野一郎

(以下「原告」という。)

右訴訟代理人弁護士

山崎敏彦

植田勝博

右訴訟代理人弁護士(第三事件)、右訴訟復代理人弁護士(第一、第二事件)

丸橋茂

藤原弘朗

第一事件被告、第二事件原告

日本電信電話株式会社

(以下「被告NTT」という。)

右代表者代表取締役

飯田克己

右訴訟代理人弁護士

高野裕士

澤村英雄

第一事件被告、第三事件原告

乙川太郎

(以下「被告乙川」という。)

右訴訟代理人弁護士

植村元雄

林肇

土方周二

主文

一  第一事件について

1  原告の被告NTTに対する別紙債務目録一記載のダイヤル通話料及び情報料各支払債務が存在しないことを確認する。

2  原告の被告乙川に対する別紙債務目録二記載の情報料支払債務が存在しないことを確認する。

3  原告のその余の請求を棄却する。

二  第二事件について

1  原告は、被告NTTに対し、金八万五六一四円及び内金四万五七二二円については平成三年一月八日から、内金三万九八九二円については同年二月六日から、それぞれ支払済みの前日に至るまで年14.5パーセントの割合による金員を支払え。

2  被告NTTのその余の請求を棄却する。

三  第三事件について

被告乙川の請求を棄却する。

四  訴訟費用は、全事件を通じて、原告に生じた費用の二〇分の七と被告NTTに生じた費用の二分の一を被告NTTの負担とし、原告に生じた費用の二〇分の五と被告乙川に生じた費用を被告乙川の負担とし、原告に生じたその余の費用と被告NTTに生じたその余の費用を原告の負担とする。

五  この判決は、第二項の1に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一第一事件

1  主文第一項の1、2同旨。

2  被告NTTは、原告に対し、金五〇万円を支払え。

二第二事件

原告は、被告NTTに対し、金二二万七四一三円及び内金一二万一六八四円については平成三年一月八日から、内金一〇万五七二九円については同年二月六日から、それぞれ支払済みの前日に至るまで年14.5パーセントの割合による金員を支払え。

三第三事件

原告は、被告乙川に対し、金三六万二〇七五円及び内金一九万二一六七円については平成三年一月八日から、内金一六万九九〇八円については同年二月六日から、それぞれ支払済みの前日に至るまで年14.5パーセントの割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、被告NTTがダイヤル通話料の支払を(第二事件)、被告乙川が情報料回収代行サービス(いわゆるダイヤルQ2)による情報料の支払を(第三事件)、それぞれ原告に求めているのに対し、原告が、息子が無断でダイヤルQ2のために電話を使用したことを理由に右情報料及びダイヤルQ2使用にかかるダイヤル通話料の支払を拒絶して右債務の不存在確認を求めるとともに、原告の加入電話に対する被告NTTの違法な発信停止措置により精神的損害を被ったとして不法行為に基づき慰謝料等(慰謝料五〇万円、弁護士費用五万円の計五五万円の内金として金五〇万円)を請求している(第一事件)事案である。

一争いのない事実及び証拠上明らかな事実(証拠を挙示していない部分は当事者に争いがない。)

1  当事者

(一) 被告NTTは、日本電信電話株式会社法に基づき設立され、電気通信事業法に基づき別紙契約約款一記載の内容を含む電話サービス契約約款(以下「本件契約約款」)を定め、電話サービス等営業規則にのっとり電気通信事業を営む株式会社である。

(二) 被告乙川は、被告NTTが本件契約約款一六二条ないし一六四条において規定している情報料回収代行サービス(以下「情報料回収代行サービス」)における有料情報サービス(加入電話等を利用することにより有料で情報の提供を受けることができるサービスであって、情報提供者が、被告NTTによるその料金の回収代行について被告NTTの承諾を得たうえで提供するもの。以下単に「有料情報サービス」)の「情報提供者」となり、番組名「パーティーライン」、サービス番号「〇九九〇―××××××」で有料情報サービス(以下「本件情報サービス」)を行っている者であり、別紙契約約款二記載の内容を含む情報等提供者―利用者標準約款(有料情報サービス契約約款、以下「本件標準約款」)を定めている。

(三) 原告は、被告NTTと、別紙電話加入契約目録記載のとおり電話番号大阪×××局××××番の加入電話(以下「本件加入電話」)につき電話加入契約を締結した者であり、息子である二郎(平成二年度当時高校二年生、以下「二郎」)と二人で住所地において暮らしている(二郎に関する事実は原告本人の供述により認める。)。

2  本件の事実経過

本件加入電話に関する平成二年一二月分(平成二年一一月六日から同年一二月三日)及び平成三年一月分(平成二年一二月四日から平成三年一月四日、以下併せて「本件期間」)の電話料金等は、二郎が原告不知の間に無断で(原告の明示又は黙示の承諾がない状況下で)本件加入電話により本件情報サービスを利用していたために(この点は原告本人の供述により認める。)、別紙料金表記載のとおりとなった(被告NTT請求分としては別紙料金表記載一1及び二1のとおり、計二二万七四一三円の通話料等〔(以下「本件請求通話料」〕であり、そのうち情報料回収代行サービス利用に際して電話回線を使用したことに伴うダイヤル通話料は合計一三万七六七〇円〔消費税分を除く。〕であった〔以下「本件通話料」〕。また、本件情報サービスの情報料債務は計三六万二〇七五円〔消費税分を含む。〕であった〔以下「本件情報料」〕。)。原告は、被告NTTからの電話料金等の請求に対し、被告NTTから料金明細内訳表を取り寄せたが、右電話料金等の支払をしなかった。

被告NTTは、平成二年一二月二七日から平成三年一月二五日まで、本件加入電話について発信停止(加入電話への着信はできるが、加入電話からの発信はできないもの。)の措置を採った(以下「本件発信停止措置」)。

二争点(主張の詳細は別紙当事者の主張記載のとおり。)

1  本件情報料債務の支払義務者は原告であるか否か。

二郎の本件情報サービスの利用による情報料債務が加入電話契約者である原告に発生する根拠として、被告乙川は、①本件契約約款一六二条、②本件標準約款六条、③情報料と一体性を持つダイヤル通話料が本件契約約款一一八条により発生することを挙げ、被告NTTは現実的必要性を背景とする本件契約約款一六二条の解釈を挙げる。

2  被告NTTは、原告に対して、本件通話料を請求できるか否か。

被告NTTは、本件契約約款一一八条を根拠に原告が本件通話料を含む本件請求通話料の支払義務を負うと主張し、原告は、本件情報料債務が発生しないのに本件通話料を請求することは信義則に反するものであり、その限度で一一八条が公序良俗に反し無効であると主張する。

3  被告NTTの本件発信停止措置は、原告に対する不法行為となるか否か。

原告は、被告NTTが強制的に違法な本件発信停止措置を採ったものであり、右措置に対する原告の承諾は、無理にさせられたものであって、真摯な同意でないと主張する。

第三争点に対する判断

一争点1(本件情報料)について

1 前記第二の一の2記載のとおり、本件期間にされた本件加入電話を用いての本件情報サービスの利用は、右電話の加入電話契約者である原告ではなく、原告の息子の二郎が原告不知の間に無断で行ったものと認められるが、被告らは、かような場合にも本件契約約款一一八条、一六二条、本件標準約款六条等を根拠に原告に情報料債務が発生すると主張する。

しかしながら、本件契約約款一六二条は、「有料情報サービスの利用者(その利用が加入電話等からの場合はその加入電話等の契約者とします。)は、有料情報サービスの提供者に支払う当該サービスの料金等を、当社がその情報提供者に代わって回収することを承諾していただきます。」(一部省略あり。)となっており、被告NTTが情報提供者に代わって情報料を回収する相手が加入電話契約者となることを明示はしているが、本件契約約款が被告NTTと加入電話契約者との関係を規律するものであることに徴すると、加入電話契約者以外の者が加入電話契約者に無断で情報料回収代行サービスを利用した場合に加入電話契約者と情報提供者の間で情報料債務が発生する根拠として右条項の文言を読み取ることはできず、右の点については約款上明示されていないというほかない。そして、①本件契約約款が被告NTTにより一方的に定められていること(右一六二条につき郵政大臣の認可を受けていないことは原告と被告NTTの間に争いがない。)、②本件情報料発生当時に、情報料回収代行サービスの内容並びにその利用による情報料及びダイヤル通話料が容易に高額となることなどが一般に周知徹底されておらず、加入電話契約者が右サービスの利用に関し同居者等を適正に管理指導できる状態でなかったこと(弁論の全趣旨)、③他者の行為により債務を負担することになるのは契約法上はあくまでも例外的なものであることに徴すると、電話を利用しての契約に関しては画一的に加入電話契約者に債務を負担させることが簡便であるといえることや情報料債務とダイヤル通話料債務が一体性を有することなどを考慮しても、加入電話契約者以外の者が加入電話契約者に無断で情報料回収代行サービスを利用した場合に、加入電話契約者に情報料債務を発生させるには、少なくとも約款上明示的に表示されていることが必要であると解するのが相当であり、したがって、本件のような場合には、本件契約約款一六二条を根拠に情報料債務が発生すると考えることはできない。そして、加入電話契約者と情報提供者との間で情報料債務が発生しない以上、右条項をもって、加入電話契約者が、被告NTTによる情報料回収を受忍すべき根拠とすることもできない。

なお、本件契約約款一一八条は、公共性を有し、高度の画一性・定型性が要求されるダイヤル通話料に関する規定であることがその文言上明らかであるから、右条項をもって情報料回収代行サービス利用による情報料債務の負担の根拠とすることもできない。

ちなみに、本件標準約款については、情報提供者と契約関係に入った者を拘束するとみることはできるが、本件のように加入電話契約者以外の者(二郎)が情報提供者との間で情報の授受を行った場合に、しかも、右授受について加入電話契約者たる原告が明示又は黙示の承諾もしていないのに、加入電話契約者たる原告が右標準約款の適用を受けるものとは到底認められず、また、被告NTTの主張する「事実的契約関係の理論」は、その内容が具体的明確でなく、主張自体失当というほかない。

以上によれば、本件加入電話の加入電話契約者である原告は、二郎が原告に無断で情報料回収代行サービスを利用したことにより発生した本件情報料債務を負担しないものと解するのが相当である。

よって、被告乙川の原告に対する情報料請求は理由がなく、原告の被告らに対する情報料にかかる債務不存在確認請求は理由がある。

2 なお、本件情報料について、被告NTTは原告に対して請求を行わない旨主張しているので、被告NTTに対する債務不存在確認の確認の利益が問題となる。しかしながら、前記第二の一の2記載のとおり、被告NTTが原告に対し、本件情報料債務を含む本件電話料金等を請求していたことは原告と被告NTTとの間に争いがなく、また、被告NTTの主張も原告が本件情報料債務を負担するものでないことまで認める趣旨ではなく、将来の紛争の可能性も否定しえないものであるから、原告には被告NTTに対して本件情報料債務の不存在確認を求める確認の利益があるというべきである。

二争点2(本件請求通話料、本件通話料)について

1 前記第二の一の1の(一)、同2記載のとおり、本件請求通話料(本件通話料を含む)が本件加入電話の使用により発生したものであること、及び、本件契約約款においては、一一八条において、契約者回線から行った通話は、その契約者回線の契約者以外の者が行った通話であっても、その契約者回線の契約者が支払う旨が明示されていることは原告と被告NTTとの間で争いがなく、証拠(<書証番号略>、原告本人)、前記一の1認定の事実及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。すなわち、①被告NTTは平成元年五月に本件契約約款一六二条ないし一六四条を追加して、同年七月から情報料回収代行サービスを開始したこと(明らかに争いがない。)、②被告NTTは、有料情報サービスが利用されることによって、右利用に伴うダイヤル回線の使用によりダイヤル通話料収入を得るとともに、情報提供者から手数料として一か月ごとに一万七〇〇〇円及び回収代行を行った情報料金の九パーセントを受け取ることになっていること(<書証番号略>)、③本件情報料及び通話料発生当時においては、情報料回収代行サービスの内容並びにその利用による情報料及びダイヤル通話料が容易に高額となることが一般に周知徹底されておらず、原告自身も右事実を認識していなかったこと(原告本人)、④本件では、本件期間における本件加入電話を使用しての情報料回収代行サービス利用による情報料が金三六万二七一〇円であるのに対し、右利用に伴うダイヤル通話料が金一三万七六七〇円となっていること(争いがない。)が認められる。

2 右事実に照らし判断すると、被告NTTは、情報料回収代行サービスを創設し、それによって手数料やダイヤル通話料等の利益を得ており、右サービスの創設はダイヤル通話料の増収をも目的の一つとしているものと考えられ、右サービス利用による情報料は、それに伴い生じたダイヤル通話料と密接な関係にあるものといえる。そして、平成二年末頃当時においては、情報料回収代行サービスに関する知識が一般に広まっておらず、かつ、原告もまた十分な知識を有しておらず、原告は二郎の情報料回収代行サービス利用について管理指導することができる状況にはなかった。したがって、二郎が原告の明示又は黙示の承諾を得ずに情報料回収代行サービスを利用したため、その情報料債務を原告が負担しないものと解される本件において、被告NTTが右サービスの利用に伴い発生した本件通話料を原告に請求できるとするのは、被告NTTが創設した制度によって責めを負うべき事由のない原告が通常予測し得る範囲を大巾に超える多額の損失を被り、一方で、被告NTTは制度自体の中心的債務(情報料債務)を原告が負担しないのにもかかわらず、右損失分の利益を加入電話契約者たる原告から得て、右制度創設の目的を達成することができる結果となる。かような結論は、特に本件のようにダイヤル通話料が高額に及ぶ場合には、不当過大な料金を合理的理由もないのに、一方的に請求し得るというものであって、信義誠実の原則(民法一条二項)に照らし具体的妥当性を欠くものというほかない。よって、被告NTTが本件通話料を原告に請求することは、信義則に反し許されないものと解すべきである。

なお、被告NTTは、情報料回収代行サービスに関する苦情や問題が生じていたため、平成二年一〇月から加入電話契約者の希望により情報料回収代行サービスの利用を規制する取扱いを実施するようになり、平成三年八月からダイヤル通話料が一定額以上になった場合で情報料回収代行サービスの利用額が電話料金の半分以上の利用者に対しては、請求書発送よりも早く利用額が高額になっていることを電話等で知らせるサービスを実施している(弁論の全趣旨)が、それは、本件が起こる直前又はその後のことであって、平成二年末の本件当時の問題としては、特に考慮することはできず、前記認定判断を左右するものではない。

よって、原告の第一事件における被告NTTに対する本件情報料及び本件通話料の不存在確認請求には理由があり、また、被告NTTの第二事件における本件請求通話料は、本件通話料一三万七六七〇円(平成二年一二月分・七万三七五〇円、平成三年一月分・六万三九二〇円)及びその消費税相当額四一二九円(平成二年一二月分・二二一二円、平成三年一月分・一九一七円)の部分については理由がなく、その余の部分については理由がある。

三争点3(本件発信停止措置の違法性)について

1 <書証番号略>、原告本人、証人丙沢三夫及び前記第二の一の事実によると、以下の事実が認められる。

原告は、平成二年一二月二六日頃、被告NTTから同年一二月分(平成二年一一月六日から同年一二月三日までの利用)のダイヤル通話料等として三二万二一七三円の請求を受けた。そこで、原告が同年一二月二七日に被告NTT港営業所に出向いて、同営業所の料金課長丙沢三夫及び料金係長丁海四夫と話し合ったところ、請求金額が高額になっているのは、①二郎が情報料回収代行サービスを利用し、さらに、有料情報サービスで知り合った友人と長距離電話をしていたためであること、②同月二一日に二郎の希望で本件加入電話については情報料回収代行サービスが利用できない状態になっていたこと、③平成三年一月分(利用期間・平成二年一二月四日から平成三年一月四日)のダイヤル通話料等が情報料を併せて二七万八八三〇円となっていることなどが判明した。

原告は、月々一万円、ボーナス時六万円の三年程度での支払を申し出たが、被告NTTでは一年間で支払済みに至らない分割返済案は受け入れていなかったことから、分割返済の合意には至らなかった。そして、丙沢課長は、原告に対し、「本件加入電話の使用を続けて行けば二郎の長距離電話もあり、ダイヤル通話料が高額になることが予測され、また、そうなるとダイヤル通話料の支払も困難になるため、右電話からの発信の規制をしたらどうか。」と提案し、当初は右提案に難色を示していた原告も、丙沢課長らの説得により最終的にはこれを承諾した。そこで、同日から本件加入電話につき発信停止措置が採られることになった。

原告は、本件加入電話の発信停止により生活に不便を感じたことから、平成三年一月二二日に港営業所を訪れ、丙沢課長に対して本件発信停止措置を解除してほしい旨申し立て、これに対して同月二四日に回答するとの返事がされていたところ、同月二四日に、原告が本件について相談に行った大阪市消費者生活センターから被告NTT港営業所に対し本件発信停止を解除するようにとの要請もあったために、本件発信停止措置は同月二五日に解除された。

2  右事実に照らし判断すると、本件発信停止措置は、原告の同意を得て行ったものであり、右同意を得るに際しての説得については二郎の利用により本件加入電話使用による以後のダイヤル通話料が高額となる虞れがあることも説得理由の一つとなっており、右同意が原告の本意ではなかったにしても、脅迫又は正常な判断能力を失わせる程に執拗な説得等、社会通念上不当といえるような方法で説得したとまでは認め難い。なお、本件発信停止措置の解除についても、原告の要望に対し二日後の回答期限を定め、要望から三日後に右解除がされているから、要望から解除までの右程度の遅れは事務処理上許容される限度の期間であったといえる。したがって、本件発信停止措置が違法なものであるとは認められない。

よって、その余の点について判断するまでもなく、原告の被告NTTに対する慰謝料請求は理由がない。

(裁判長裁判官大谷種臣 裁判官大門匡 裁判官小倉哲浩)

別紙債務目録一

一 平成二年一二月分(利用期間・同年一一月六日から同年一二月三日)

1 ダイヤルQ2(情報料回収代行サービス)利用に伴う通話料

七万三七五〇円

2 ダイヤルQ2利用による情報料

一九万四六五〇円

二 平成三年一月分(利用期間・平成二年一二月四日から平成三年一月四日)

1 ダイヤルQ2利用に伴う通話料

六万三九二〇円

2 ダイヤルQ2利用による情報料

一六万八〇六〇円

別紙債務目録二

一 平成二年一二月分(利用期間・同年一一月六日から同年一二月三日)

1 ダイヤルQ2利用による情報料

一八万六五七〇円

2 右情報料の消費税

五五九七円

3 右1、2に関する、遅延損害金(起算点・平成三年一月八日)

年14.5パーセント

二 平成三年一月分(利用期間・平成二年一二月四日から平成三年一月四日)

1 ダイヤルQ2利用による情報料

一六万四九六〇円

2 右情報料の消費税

四九四八円

3 右1、2に関する遅延損害金(起算点・平成三年二月六日)

年14.5パーセント

別紙料金表

一 平成二年一二月分

1 被告NTT請求分

(一) 基本料金 二一四〇円

(二) ダイヤル通話料

一一万四三八〇円

(内ダイヤルQ2に掛けた際のダイヤル通話料 七万三七五〇円)

(三) コレクトコール通話料

一四五〇円

(四) 明細内訳作成料 一七二円

(五) 消費税 三五四二円

(六) 合計 一二万一六八四円

2 代行請求分

(一) ダイヤルQ2情報料

一九万四六五〇円

(内本件情報料サービスの情報料 一八万六五七〇円)

(二) 消費税 五八三九円

(内本件情報サービス情報料に関するもの 五五九七円)

(三) 合計 二〇万〇四八九円

3 請求額合計

三二万二一七三円

二 平成三年一月分

1 被告NTT請求分

(一) 基本料金 二一四〇円

(二) ダイヤル通話料

九万六九七〇円

(内ダイヤルQ2に掛けた際のダイヤル通話料 六万三九二〇円)

(三) コレクトコール通話料

三一三〇円

(四) 明細内訳作成料 四一五円

(五) 消費税 三〇七四円

(六) 合計 一〇万五七二九円

2 代行請求分

(一) ダイヤルQ2情報料

一六万八〇六〇円

(内本件情報サービスの情報料 一六万四九六〇円)

(二) 消費税 五〇四一円

(内本件情報サービス情報料に関するもの 四九四八円)

3 請求額合計 二七万八八三〇円

別紙契約約款一

電話サービス契約約款

一一八条 契約者、公衆電話の利用者、特殊船舶通話取扱所若しくは遠洋船舶通話取扱所から通話を行った者又は相互接続通話の利用者は、次の通話について、第一一三条(通話時間の測定等)の規定による測定した通話時間と料金表第1表第2(通話料金)の規定とに基づいて算定した料金の支払いを要します。

区別

支払いを要する者

1  2から5以外の通話

(1) 契約者回線から行った通話

(その契約者回線の契約者以外のものが行った通話を含みます。)

その契約者回線の契約者

……(以下省略)……

一六二条 有料情報サービス(加入電話等…(中略)…、街頭公衆電話及び店頭公衆電話を利用することにより有料で情報の提供を受けることができるサービスであって、当社以外の者が、当社によるその料金の回収代行について当社の承諾を得たうえで提供するものをいいます。以下同じとします。)の利用者(その利用が加入電話等からの場合はその加入電話等の契約者とします。以下同じとします。)は、有料情報サービスの提供者(以下「情報提供者」といいます。)に支払う当該サービスの料金等(有料情報サービスの利用の際に、情報提供者がお知らせする料金及びその延滞利息をいいます。以下同じとします。)を、当社がその情報提供者に代わって回収することを承諾していただきます。

ただし、加入電話契約者(その契約者回線が当社が指定する電話サービス取扱所の取扱所交換設備に収容されている場合に限ります。以下同じとします。)については、当社が指定する電話サービス取扱所に申し出をしていただいたうえで、当社による有料情報サービスの料金等の回収代行を、当社が別に定めるところにより、拒否することができます。…(以下省略)…

一六三条 当社は、前条の規定により回収する有料情報サービスの料金等については、ダイヤル通話料の料金及びその延滞利息に含めて当該サービスの利用者に請求します。この場合、街頭公衆電話又は店頭公衆電話の電話機からの利用の場合はその都度請求し、加入電話等の契約者回線からの利用の場合はその利用に係る加入電話等のダイヤル通話の料金に適用される料金月ごとに集計のうえ請求します。

2 前項の場合において、請求する有料情報サービスの料金は、当社の機器により計算します。

一六四条 当社は、有料情報サービスで提供される情報の内容等当社の責めによらない理由による損害については、責任を負いません。

別紙契約約款二

情報等提供者―利用者標準約款(有料情報サービス契約約款)

六条 本サービスの利用者(その利用がNTTの提供する加入電話等からの場合はその加入電話等に係るNTTとの契約者をいいます。以下同じとします。)は、前条の規定に基づいて算定した料金の支払いを要します。

八条 本サービスを街頭公衆電話又は店頭公衆電話の電話機から利用する場合、利用者はその料金について利用の都度、支払っていただきます。

2 本サービスを加入電話等の契約者回線から利用する場合その利用に係る加入電話等のNTTとの契約者はその料金等についてNTTが定める期日までにNTTが指定する場所において支払っていただきます。この場合、料金はその利用に係る加入電話等のダイヤル通話料に適用される料金月(1の暦月の起算日(NTTが加入電話等契約ごとに定める毎暦月の一定の日をいいます。)から次の暦月の起算日の前日までの間をいいます。以下同じとします。)に従って計算したものとします。

3 前2項の規定によるほか、本サービスの料金等の計算及び支払いについては、NTTの電話サービス契約約款の規定に準ずるものとします。

九条 本サービスの利用者は、料金についてNTTが定める支払期日を経過してもなお支払いがない場合は、支払期日の翌日から支払いの日の前日までの日数について、年14.5%の割合で計算して得た額を延滞利息としてNTTが指定する期日までに支払っていただきます。

ただし、支払期日の翌日から起算して一〇日以内に支払いがあった場合は、この限りでありません。

別紙電話加入契約目録

一 契約締結日 昭和四三年一二月五日

二 電話番号 大阪×××局××××番

三 設置場所 <省略>

四 料金支払方法 基本料金については毎月初日から末日までの分を、右以外のダイヤル通話料金等については毎月前月六日から当月五日までの分を、それぞれダイヤル通話料等の右締切後一箇月経過後を支払期日として被告NTTの営業所に持参又は送金して支払う。

五 遅延損害金 料金の支払期日の翌日から支払済みの前日まで、料金に対し年14.5パーセントとする。

別紙当事者の主張

一 争点1(本件情報料)について

1 被告らの主張

(一) 被告乙川の主張

本件契約約款一六二条(別紙契約約款一)及び本件標準約款六条(別紙契約約款二)により、加入電話契約者以外の者が有料情報サービスを利用したとしても加入電話契約者が情報料の支払義務を負うことになるのであるから、本件情報料の支払義務者は本件加入電話の加入電話契約者である原告となる。

さらに、本件情報サービスを利用する場合にはダイヤル通話料も発生するものであるが、ダイヤル通話料については誰が利用しようとも本件契約約款一一八条により加入電話契約者が支払義務を負うものである。ダイヤル通話料と情報料は同時に発生するものであり、原告にダイヤル通話料が発生する以上、本件情報料についても原告が支払義務を負うのが当然である。

(二) 被告NTTの主張

有料情報サービスに関する契約は、加入電話を通じて現実に電話を掛けた利用者の特定が事実上不可能であること、利用者と加入電話契約者との間は内部関係で処理できること、及び、本件契約約款一六二条が存在することから、加入電話契約者以外の者が電話を掛けて情報を受け取った場合でも、加入電話契約者が情報提供者に対し情報料債務を負うという法律関係が発生すると考えるべきである。このことは、情報提供者からの情報料回収委託に基づき、被告NTTが加入電話契約者と回収代行の承諾の約款を成立させたことにより、情報提供者に対する加入電話契約者の情報料支払義務に関する契約関係が発生すると考えることができるし、さらには、「事実的契約関係」の理論(『注釈民法一三巻』八五頁以下)で説明することも可能である。したがって、原告は、本件加入電話からの電話利用により本件情報サービスがなされた以上、本件情報料を負担すべきものである。

なお、被告NTTは原告に対し、本件情報料の請求を行わない。

2 原告の主張

本件契約約款一六二条は、回収代行の承諾を規定するのみで、決して電話契約者の情報提供者への情報料支払義務を規定したものではない。

また、原告と被告乙川との間には、黙示、明示、事実上との何ら契約関係がなく、また本件契約約款等にも本件標準約款を原告に適用させる規定もないので、本件標準約款六条を原告に適用することはできない。

さらに、加入電話を通じて現実に電話を掛けた利用者の特定が事実上不可能であることや利用者と加入電話契約者との間は内部関係で処理できることなどという理由は、債務を負う根拠となる規定がある場合にその規定を正当化する根拠とはなるが、何ら規定がない以上、原告が第三者の行為により債務を負担することになる根拠とはならない。

二 争点2(本件請求通話料、本件通話料)について

1 被告NTTの主張

本件加入電話による通話については、本件契約約款一一八条によって、たとえ加入電話契約者以外の者が通話をしたとしても加入電話契約者との間でダイヤル通話料が発生する。したがって、二郎が原告に無断で本件加入電話を使用したとしても、原告はダイヤル通話料の支払を拒絶することはできない。

また、ダイヤル通話料は、電話回線を一定時間使用したことを原因として加入電話契約に基づいて発生したものであり、他方情報料は情報提供契約に基づいて発生したものである。このように、右各契約の内容、提供するサービス及び契約当事者も異なっているのであるから、一方が無効になったからといって他方が無効になるということは到底ありえない

なお、原告は、情報料回収代行サービスにつき種々の問題点があると主張しているが、情報料回収代行サービスは、以下のように有益であり、かつ、問題点に対する対処もされているものである。

(一) 情報料回収代行サービスの有益性

情報料回収代行サービスにおける有料情報サービスでは、各種ニュース・情報の提供を始め、カウンセリング、電話会議等その内容は多岐にわたり、情報料回収代行サービス制度の目的及び内容の多くは社会的必要性と有用性のあるものである。本件加入電話により利用されたものの大部分(金額で、全体の約98.5パーセント)は右電話会議の一つであるパーティーラインと呼ばれるものである。

(二) 被告NTTが施した情報料回収代行サービスの問題点に対する対策

被告NTTが情報料回収代行サービスを開始するにあたり、郵政大臣の許可を受けた社団法人「全日本テレホンサービス協会」内に有料情報サービスに関して審査する倫理審査委員会が設置された。同委員会は、情報提供者が提供する情報に、公共の秩序、善良の風俗を乱す恐れがあると考える場合は、情報提供者に改善を求めたり、被告NTTと情報提供者間の情報料回収代行の契約の解除を被告NTTに勧告することとなっている。

また、被告NTTは、平成二年一〇月から、加入電話契約者の希望により、情報料回収代行サービスの利用を規制する取扱いを実施するようになり、それにともない、情報料回収代行サービスだけを選択的に利用できないようにする機能を持たないクロスバー交換機からの情報料回収代行サービスを平成三年四月以降休止している。

さらに、被告NTTは、平成三年八月から、ダイヤル通話料が一定額以上になった場合で、情報料回収代行サービスの利用額が電話料金の概ね半分以上の利用者に対しては、請求書発送より早く利用額が高額になっていることを電話等で知らせるサービスを実施している。

2 原告の主張

左記(一)ないし(三)記載の理由により、本件情報料債務が発生しないにもかかわらず、被告NTTが本件情報サービスの利用のために使用した電話回線のダイヤル通話料である本件通話料を本件契約約款一一八条に基づき請求することは信義則に反するものであり、仮に同条が適用されるとすれば、その限度において同条は公序良俗に反し無効となるのである。

(一) ダイヤル通話料と情報料の一体性

有料情報サービス利用に際して使用された電話回線のダイヤル通話料は、情報料と不可分一体をなすものであって、情報料債務が発生しないときにダイヤル通話料のみが存続するというのは不当である。被告NTTは、有料情報サービスによりダイヤル通話料として大きな収入を得て、また、情報料自体からも九パーセントの手数料を取り、莫大な利益を挙げている。被告NTTと情報提供者は、共同事業として有料情報サービスを行っているのである。

しかも、被告NTTは、情報料回収代行サービスにかかる請求については、情報料債務と情報料回収代行サービス利用にかかるダイヤル通話料債務とを合算して集計しており、両者を一体として「ダイヤル料金」と考えているのである。また、情報料回収代行サービス制度の発足当時は、ダイヤル通話料債務と情報料債務とを全く区別できないシステムになっていたのであり、被告NTTにおいてダイヤル通話料のみ請求するということが不可能であった。さらに、最近でも、ダイヤル通話料債務と情報料債務とを区別した集計が全くできない地域があった。このような情報料回収代行サービスの集計システムの実態からしても、ダイヤル通話料債務と情報料債務が別個独立のものだという解釈は到底採り得ない。

(二) 情報料回収代行サービスの問題性

情報料回収代行サービスは、極めて問題の多い制度であり、そのような情報サービスの情報料の一部分である本件通話料に本件契約約款一一八条を適用するのは不当である。

有料情報サービスでは、公然猥褻罪で摘発される業者や、賭博で告発される業者、犯罪その他青少年に悪影響を及ぼす事例等が続出し、社会問題化している。しかも、有料情報サービスは娯楽についての高料金のものであり、他人による不正使用等によって、これまで予期しえなかった不合理な請求が発生することは当然である。被告NTTは、このような電話の制度につき、申込み制を採らず、特に停止の申出をしない限り自動的に情報料回収代行サービスの利用ができるような状態に置いている。また、一般大衆は、電話サービスの提供を受けるにあたって被告NTTと契約を結ばざるを得ない状況にあるが、情報料回収代行サービスは、被告NTTがそのような独占状態にある地位を利用して電話加入者に他の事業者である情報提供者との取引を強要するものであって、独占禁止法一九条、同法二条九項、公正取引委員会一般指定「不公正な取引方法」一〇条の抱き合わせ販売に該当する不当なものである。

(三) 情報料回収代行サービスにおける公共料金の制度の適用のある電話の制度の逸脱

電話が公共料金の制度により使用、停止、その他について一律の処理がなされ、また約款についても郵政大臣の認可を得て一方的に変更ができるのも、電話が日常生活に不可欠な情報伝達の手段についての公共事業であることからである。誰が使ったか分からない場合でも契約者に支払義務が発生するという本件契約約款一一八条は、右要請から是認されるのである。しかるに情報料回収代行サービスは、情報伝達手段としての電話の制度を逸脱し、本来の電話の機能とは全く別のものである。また、その金額の面でも、本件の例に見られるように一か月の収入を越えるような料金が発生し、公共料金としての電話料の範囲を大きく逸脱している。右のように生活を簡単に破綻に導くような料金システムについては郵政大臣の認可した料金・約款の枠外にある。このように公共料金制度の中で初めて認められている本件契約約款一一八条を、情報料回収代行サービスにより発生した債務に適用するのは不当というべきである。

三 争点3(本件発信停止措置の違法性)について

1 原告の主張

原告は、被告NTTの担当者に対し、平成二年一二月頃、本件情報サービスを利用していないので本件情報料を支払えない旨を主張した。しかし、被告NTTの担当者は、本件情報料を支払わなければ電話の発信を停止すると原告に警告し、本件情報料の支払を求めた。そして、原告が、本件電話料等を支払わなかったので、被告NTTは本件発信停止措置を取ったのである。

また、被告主張のとおり、本件発信停止措置につき原告の承諾があったとしても、原告は、発信停止措置を取ることを断れば電話の利用停止又は電話加入契約を解除されることを前提として無理に承諾させられたのであり、本件発信停止措置が違法なものであることに変わりはない。さらに、右承諾は、原告がダイヤル通話料と情報料を併せて合計約五〇万円の債務を負っていることを前提にされたものであり、ダイヤル通話料債務のみであれば一年での分割支払が可能であり、あえて発信停止措置を取る必要はなかったのであるから、原告が真実同意したことにはならない。

電話は日常生活上不可欠のものであり、原告は、その電話の発信を止められることによって、公衆電話等外で電話を掛けることを強いられ、多大な精神的損害を被った。右苦痛を金銭に評価すると金五〇万円を下らない。また、原告は本件訴訟を提起するにあたって弁護士を依頼しており、慰謝料請求分に関しての弁護料としては金五万円が相当である。したがって、原告は被告NTTの本件発信停止措置により金五五万円の損害を被ったものであるが、うち五〇万円を請求する。

2 被告NTTの主張

本件発信停止措置は、原告の希望もあって合意のうえで行った。また、本件発信停止措置の解除は、大阪市消費者センターの助言によるものでなく、原告の希望を考慮して被告NTTが行ったものである。

発信停止とは、「利用停止」とは異なり発信はできないものの、着信による通話は従来どおり行えるものであって、一般にも正規のサービス方法としてこの種の利用がなされている例は多い。発信停止とすることは、本件のごとく子供の無断利用を防ぐ方法としては好ましいものであって、自ら発信したいときは、公衆電話等から発信すればよい。したがって、本件発信停止措置により原告が精神的苦痛を被ることはない。

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